
咽頭炎と抗菌薬
発熱と咽頭炎を主訴に来院する患者で気を付けなければならないことがいくつかあります。
一つは急性喉頭蓋炎です。
風邪だと思っていた患者が気が付くと窒息して致命的になることがあります。
喉頭蓋にインフルエンザ桿菌が感染し、喉頭蓋が炎症で腫れて気道に蓋をします。
死亡例も多いです。
発熱と咽頭炎を主訴に来院した患者では急性喉頭蓋炎をまず除外しなければなりません。
そのために嚥下痛を確認します。水や唾液を飲もうとしても痛みで飲みこめずに吐いてしまうような場合には、喉頭ファイバーで喉頭蓋を確認した方がいいです。
また喉仏のあたりを指で押してみて痛みがあるかどうかを確認します。急性喉頭蓋炎では指で押すと痛がります。
急性喉頭蓋炎をみたらまず気道確保をし、それと同時に抗菌薬を投与します。
抗菌薬は緊急性があるのでβラクタムを選択します。
もう一つ、風邪との鑑別で重要なのがA群β溶血性連鎖球菌感染症です。
咽頭痛を見た場合には、A群β溶血性連鎖球菌感染症なのかその他もろもろのウイルス感染症なのかの2つに大きく分けます。
A群β溶血性連鎖球菌感染症の場合には抗菌薬をしっかりと投与して治療しないとリウマチ熱に発展することがあります。
リウマチ熱は心臓に炎症を起こして弁膜症を来すことがあります。これを予防するためにしっかりと抗菌薬を投与するのです。
次に溶連菌による咽頭炎を見分け方です。
1.高熱(38度以上)
2.扁桃に白苔の付着
3.前頸部リンパ節の腫大と圧痛
4.鼻水や咳が無い
これらの症状が溶連菌による咽頭炎の特徴です。
これらの特徴があり、溶連菌による咽頭炎が疑わしい場合には、ペニシリン系の抗菌薬で治療します。
第一選択薬はペニシリン系ですが、患者がペニシリンアレルギーの場合には第二選択薬としてマクロライド系を使用します。
溶連菌による咽頭炎は小児にも多くみられます。適当に抗菌薬を選択してはいけません。
たとえばテトラサイクリン系の抗菌薬は小児の歯や骨に沈着し、歯や骨の脆弱性をきたすことがあります。
抗菌薬には副作用があるため、なんとなく抗菌薬を選んではいけません。
出典:医学生・レジデントのためのポータルサイト レジトレ 015:Dr.孝志郎『救急外来と抗菌薬』